自然の道徳の破壊者は聖人である

自然の道徳の破壊者は聖人である

太古の純朴な時代には、人間は鳥獣とともに遊び、何の仕事をするでもなく、好きなものを食って腹皷みをうち、その日を楽しく過ごす生活を送っていた。

ところが聖人と称するものがあらわれ、やれ仁義だの、礼楽だのといったものを強制するようになってからは、人間はその純朴の性を失い、悪知恵が発達して、さまざまの悪事を働くようになった。

これみな聖人の罪によるものである。ー『老子荘子』森三樹三郎 講談社学術文庫